トランジスタ/FET接続

トランジスタ/FET増幅

能動素子のトランジスタ/FETをエミッタ/ソース接地回路、エミッタフロワー(コレクタ/ドレーン接地)回路、ベース/ゲート接地回路という基本増幅回路に組むことで電圧増幅または電流増幅、信号加工、数学演算の目的を達する。接地回路の特徴は以下に示す。一言で其々の特徴をいうと、エミッタ/ソース接地が電圧増幅、コレクタ/ドレーン接地は電流増幅、ベース/ゲート接地は高周波に向いている。また互いの良いのを生かすような、能動素子または接地回路の複用また併用することにより更に都合よく増幅可能となる。

増幅回路/特徴電圧増幅度電流増幅度入力抵抗出力抵抗
エミッタ接地 
コレクタ接地 低、約1倍
ベース接地低、約1倍
ソース接地
ドレーン接地 低、約1倍
ゲート接地低、約1倍

同種能動素子の複用

同種とはnpn同士またはpnp同士を指す。ダーリントン接続、カスコード接続(縦積み)、パラレル接続、差動増幅接続、カレントミラー、デュアルトランジスタ等。

異種能動素子の併用

異種とはnpnとpnpの混在を指す。プッシュプル接続、インバーテッドダーリントン接続、多段接続(例、電圧増幅のエミッタ接地回路+電流増幅エミッタフロワー回路)、オペアンプ等。

負帰還、正帰還回路

出力を反転させて入力に帰還する負帰還は周波数特性、歪み、雑音特性、安定性が改善される。出力を反転せずにぞのまま帰還させる正帰還は信号の増幅に伴い雑音もが増幅され、不安定な出力信号をなってしまう。負帰還回路であっても信号の周波数が高くなるにつれて位相が変化し、正帰還になってしまう。正帰還になっても不安定にならないようにコンデンサ等を使って回路の安定性を確保する。

入力、出力インピーダンス

入力抵抗は回路を入力側から見たときのインピーダンスに対して、出力抵抗は出力側から見たときのインピーダンスである。一般的には回路設計の目標として、入力抵抗は大きく即ち電圧を大きく入力して、出力抵抗が小さい即ち電圧を大きく出力可能な回路が好ましい。バッファ回路を組み合わせた多段回路は、出力抵抗を下げることができる。

抵抗、コンデンサ、コイルの併用

分圧の抵抗、結合(カップリング)=ハイパス(パスコン)で直流阻止、交流通過、デカップリング=ハイパス(パスコン)で電源の交流的な抵抗を下げて、安定させるコンデンサ、ハイパスフィルタ(微分回路)、ローパスフィルタ(積分回路)、高域増強、高周波広帯域増強するRC回路、同調増幅するLC回路等と併用する。

参考書籍

定本 トランジスタ回路の設計、鈴木雅臣氏、CQ出版社

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流体力学ベルヌーイの定理

概要

ベルヌーイの定理(Bernoulli’s theroem)は流体のエネルギ保存則(the conversation law of energy)で、固体のエネルギ保存則との相違点が圧力エネルギが含まれている。以下にまとめてみる。
物体のエネルギ保存則:
$$\frac{1}{2}mu^2+mgz = 一定\space [J] $$
ベルヌーイの定理(流体のエネルギ保存則):
単位体積あたりのエネルギ
$$ \frac{1}{2}ρu^2+ρgz+p = 一定\space [J/m^3 = Pa] $$
単位質量あたりのエネルギ
$$ \frac{1}{2}u^2+gz+\frac{p}{ρ} = 一定\space [J/kg] $$
単位重量あたりのエネルギ
$$ \frac{1}{2g}u^2+z+\frac{p}{ρg} = 一定\space [J/N = m] $$
ただし、\(\frac{1}{2}ρu^2、\frac{1}{2}u^2、\frac{1}{2g}u^2 \) = 運動エネルギ、\( ρgz、gz、z \) = 位置エネルギ、\( p、\frac{p}{ρ}、\frac{p}{ρg} \) = 圧力エネルギ、p = 圧力\([Pa]\)、ρ = 流体密度\([kg/m^3]\)、u = 平均流速\([m/s]\)、g = 重力加速度\([9.8m/s^2]\)

参考書籍

はじめての流体力学、田村恵万氏著、科学図書出版

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フーリエ変換~ラプラス変換~Z変換

はじめに

プリズムをかけて赤から紫の順に太陽光のスペクトルを表現させるように、フーリエ級数、フーリエ変換・逆変換、ラプラス変換・逆変換、Z変換・逆変換が、関数の(広義的)周波数特性を解析するとき、必ず登場する。フーリエ変換、ラプラス変換、Z変換の計算式および(広義的)周波数領域におけるイメージ表現の例を以下のように示す。

フーリエ級数

周期2Lの区分的に滑らかな周期関数\(f(t)\)は、不連続点を除いて、$$ f(t) = \frac{1}{2}a_0 + \sum_{n=1}^{\infty} (a_n cos\frac{n\pi}{L}t + b_n sin\frac{n\pi}{L}t) $$ で表される。また実フーリエ級数、フーリエ級数の三角関数表現ともいう。
ただし、\(\small a_0 = \frac{1}{L} \int_{-L}^L f(t)dt , \space a_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^L f(t)cos\frac{n\pi}{L}tdt ,\) \( \space b_n = \frac{1}{L} \int_{-L}^L f(t)sin\frac{n\pi}{L}tdt \)

また複素フーリエ級数がフーリエ級数の複素表現ともいう。
$$ f(t) = \sum_{n=1}^{\infty} C_n e^{\frac{in\pi t}{L}} ……①$$ ただし、\(\small C_0 = \frac{1}{2L} \int_{-L}^L f(t)dt,C_n=\frac{1}{2L}\int_{-L}^L f(t)e^{-\frac{in\pi t}{L}}dt ……②\)

周期関数\(f(t)\)が偶関数のとき、フーリエ余弦級数となる。
$$ f(t) = \frac{1}{2}a_0 + \sum_{n=1}^{\infty} a_n cos\frac{n\pi}{L}t $$ただし、\(\small a_0 = \frac{2}{L} \int_{0}^L f(t)dt ,\space a_n = \frac{2}{L} \int_{0}^L f(t)cos\frac{n\pi}{L}tdt \)

周期関数\(f(t)\)が奇関数のとき、フーリエ正弦級数となる。
$$ f(t) = \sum_{n=1}^{\infty} b_n sin\frac{n\pi}{L}t $$ただし、\( b_n = \frac{2}{L} \int_{0}^L f(t)sin\frac{n\pi}{L}tdt \)

フーリエ変換・逆変換

\(f(x)\)が非周期関数のとき、周期2L→無限大にすると、フーリエ級数がフーリエ変換(FT: Fourier Transform)・逆変換(IFT: Inverse Fourier Transform)に拡張される。区分的に滑らかで絶対可積分な関数\(f(x)\)について、式②よりフーリエ変換は次の式で表される。\( F(\omega) \)は式②の\( C_n \)に相当する、いわゆる周波数成分となる振幅である。
$$ F(\omega) = \int_{-\infty}^{\infty} f(x)e^{-i\omega x}dx $$
式①よりフーリエ逆変換は次の式で表される。これで\(F(\omega)\)を元の関数\(f(x)\)に戻す。
$$ f(x) = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^{\infty} F(\omega)e^{i\omega x}d\omega $$
f(x)が偶関数のとき、フーリエ余弦変換フーリエ余弦逆変換となる。
$$ F(\omega) = 2\int_{0}^{\infty} f(x)cos\omega xdx \\ f(x) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} F(\omega)cos\omega xd\omega $$
f(x)が奇関数のとき、フーリエ正弦変換フーリエ正弦逆変換となる。
$$ F(\omega) = -2i\int_{0}^{\infty} f(x)sin\omega xdx \\ f(x) = \frac{i}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} F(\omega)sin\omega xd\omega $$ フーリエ変換の例として、時間領域のデルタ関数(超関数≠普通の関数) \( \delta(x-0) \) の周波数スペクトルは定数 1 になる。つまり周波数に関わらず 1 だから,全部の周波数成分が等しく含まれている。逆にいうと,あらゆる周波数成分を等しく重ね合わせるとデルタ関数が作り出せる(フーリエ逆変換)。

さらに、時刻\( x_1 \) にインパルスが立っているデルタ関数\( \delta(x-x_1) \)はフーリエ変換すると、\( F(\omega) = e^{-i\omega x_1} \) つまり螺旋 \( cos\omega x_1 – isin\omega x_1 \)となる。以上の定数 1 になるのは\(X_1=0\)のときの特例である。

合成積と関数の積

合成積(畳み込み)$$ f*g(t) = \int_{-\infty}^{\infty} f(x)g(t-x)dx $$
合成積のフーリエ変換 $$ F[f*g(t)] = F[f(x)] F[g(x)] $$
関数の積のフーリエ変換 $$ F[f(x)g(x)] = \frac{1}{2\pi} F[f(x)] F[g(x)] $$

フーリエ変換の性質

線形性(重ね合わせの原理) $$ F[af(x)+bg(x)] = aF(\omega)+bG(\omega) $$
伸縮性 $$ F[f(ax)] = \frac{1}{|a|}F(\frac{\omega}{a}) $$
変数シフト $$ F[f(x+a)] = e^{-ia\omega}F(\omega) \\ F[e^{ia\omega} f(x)]=F(\omega-a) $$
対称性 \( F[f(x)]=F(\omega) \)のとき、$$ F[F(x)]=2\pi f(-\omega) $$
共役性 $$ F(-\omega) = \bar{F}(\omega) $$

微分、積分のフーリエ変換

\(f(x)\)が区分的に滑らかで連続、絶対可積分のとき、
$$ F[f'(x)] =i\omega F[f(x)] \\ F[f^{(n)}(x)] = (iw)^{n}F[f(x)] $$
\(f(x)\)が区分的に滑らかで連続、絶対可積分、かつ\( \int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=0 \)の時
$$ F[\int_{-\infty}^{\infty}f(t)dt]=\frac{1}{i\omega}F[f(x)] $$

パーシバルの等式

$$ \int_{-\infty}^{\infty} |f(t)|^2 dt = \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}|F(\omega)|^2 d\omega $$

離散フーリエ変換・逆変換

サンプリング定理から、ある関数(画像、音声など)をそれのもつ最大の周波数の2倍以上の細かさでサンプリングしておけば、つまりサンプリング間隔ナイキスト間隔以下にすれば、サンプリングされたもの(ディジタル画像,ディジタル音声)から元の関数を再現できる。例として、CDはサンプリング周波数が44.1kHz→22.05kHzまでの音声が記録できる。逆にいうと、録音時にそれ以上の周波数の成分が入らないようにしなければならない。またフーリエ逆変換すれば、理論上サンプリング値から得た周波数成分がサンプリング値に戻る。

アナログ信号からサンプリングしたデジタル信号から、フーリエ変換・逆変換は離散フーリエ変換・逆変換と変身する。離散フーリエ変換(DFT: Discrete Fourier Transform)は次の式で表される。
$$ F_n = \frac{1}{N} \sum_{k=0}^{N-1}f_k e^{-i \frac{2n\pi}{N}k} = \frac{1}{N} \sum_{k=0}^{N-1}f_k \bar{\zeta}_{N}^{nk} \\(n=0,1,2,3,…N-1)$$
離散フーリエ逆変換(IDFT: Inverse Discrete Fourier Transform)は次の式で表される。
$$ f_k = \sum_{n=0}^{N-1} F_n e^{i \frac{2n\pi}{N}k} = \sum_{n=0}^{N-1} F_n \zeta_{N}^{nk} \\ (k=0,1,2,3,…N-1)$$
ただし、\( \zeta_{N}^{nk} = e^{i \frac{2n\pi}{N}k}, \space \bar{\zeta}_{N}^{nk} = e^{-i \frac{2n\pi}{N}k}\)

\( \zeta_{N}^{nk} \)をフーリエ行列\( (\zeta_{N}^{nk}) \)にして、フーリエ行列から周波数成分が求まる。フーリエ行列\(M_N\)の複素共役行列による離散フーリエ変換の表現(周波数成分)は次の式で表される。$$ F_N = \frac{1}{N}\bar{M}_Nf_N $$
フーリエ行列\(M_N\)による離散フーリエ逆変換の表現は次の式で表される。$$ f_N = M_NF_N $$ただし、\( M_N = (\zeta_{N}^{nk}), \space \bar{M}_N = (\bar{\zeta}_{N}^{nk}) \)

またフーリエ行列から周波数成分を解く離散フーリエ変換を高速に実行できるのは高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)である。FFTで計算すると、離散フーリエ変換での\(\small N(2N-1)\)回の計算が、約\( \small \frac{N}{2}(3log_{2}N-1) \)回の計算まで縮まる。\(\small N=2^{10}=1024 \)ならば、2,096,128回の計算が、約14,848回まで減少する。

これで、周波数帯域のスペクトル、ある周波数成分の調べたり、ある周波数成分のフィルタリング(雑音除去)したり、ある周波数成分の挿入したり、フーリエ変換・逆変換が活用される。

ラプラス変換・逆変換

フーリエ変換の複素数\(i \omega \)から\(s=\sigma+i\omega \)に拡張して、殆どの\(f(t)\)が絶対可積分となって、ラプラス変換は次の式で表される。
$$ F(s) = \int_{-\infty}^{\infty} f(t) e^{-st} dt $$
ラプラス逆変換は次の式で表される。
$$ f(t) = \frac{1}{2\pi i} \int_{\sigma – i\infty}^{\sigma + i\infty} F(s) e^{st} ds $$

Z変換・逆Z変換

ラプラス変換の\(f(t)\)をサンプリングした離散信号を\( x(n), z = e^{\sigma + i\omega T} \)とおくと、Z変換は次の式で表される。
$$ X(z) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} x(n) z^{-n} $$
逆Z変換は次の式で表される。
$$ x(k) = \frac{1}{2\pi i} \oint_{c} X(z) z^{k-1} dz $$

(広義的)周波数領域のイメージ表現例

Laplace-Fourier-tranform
ラプラス変換、フーリエ変換のイメージ表現例

Z-tranform
Z変換のイメージ表現例

ただし、\( F(s)、F(z) \)の実際は複素数である。

最後に

共にフランス科学者のフーリエ先生(徒)、ラプラス先生(師)は実の師弟関係だ。減衰振動等微分方程式と代数方程式の橋渡し役、即ち微分方程式の解き方としてのラプラス変換・逆変換が公開されたに対して、波動方程式、熱伝導方程式の解き方として、また完全正規直交関数系である\( \left\{ \frac{1}{\sqrt{2 \pi}},\frac{cos nx}{\sqrt{\pi}},\frac{sin nx}{\sqrt{\pi}} \right\}(n=1,2,3…) \)、つまり実数、正弦関数、余弦関数を組み合わたフーリエ級数から無限次元ベクトル空間が構成可能で、更に条件付き関数を時間領域\(f(t)\)または距離領域\(f(x)\)から周波数領域\( F(\omega)\)の表現に転換可能なフーリエ変換が物事/世界の新たな一面を切り拓いた。やがて離散フーリエ変換に基づいたアナログ~デジタルのサンプリング定理等デジタル信号処理に大いに貢献した。
★Jean Baptiste Joseph Fourier、Baron de、1768年3月21日~1830年5月16日、フランスの数学者・物理学者
★Pierre-Simon Laplace、1749年3月23日~1827年3月5日、フランスの数学者、物理学者、天文学者

参考書籍

フーリエ変換、佐藤敏明氏著、ナツメ社出版
今日から使えるフーリエ変換、三谷政昭氏著、講談社出版

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オイラー角~ジンバルロック~クォータニオン

オイラー角

オイラー角とは、3次元ユークリッド空間中の2つの直交座標系(デカルト座標系 )の関係を表現する方法の一つである。ロボット、ドローンの姿勢(ポーズ、向き)を直観に表現するには、オイラー角を用いることがある。オイラー角またはオイラー回転は3つの角度の組に、3座標軸まわりの回転順序(計12通りもある)で表されるので、オイラー角の変数は4つである。ロボットが姿勢\(v\)(ローカル座標系\(XYZ\))から姿勢\(v’\)(ローカル座標系\(X^{\prime \prime}Y^{\prime \prime}Z^{\prime \prime})\)へ変わる際に、例えば\(X\)軸-\(Y’\)軸-\(Z^{\prime \prime}\)軸の順に\(XY’Z^{\prime \prime}\)系オイラー角 \(\alpha,\beta,\gamma\) で3回順次回転することで姿勢の転換を表すことが可能である。【姿勢\(v’\)の座標 = 回転行列・姿勢\(v\)の座標】より、姿勢\(v\)の座標から回転後の姿勢\(v’\)の座標が求められる。姿勢\(v\)の座標、姿勢\(v’\)の座標が分かれば回転行列からオイラー角が求められる場合ある。この場合、積 \( R_{x}( \alpha ) R_{y}( \beta ) R_{z}( \gamma )\) は、\(XY’Z^{\prime \prime}\)回り順で表したときのオイラー角が \( (\alpha,\beta,\gamma) \) であるような回転を表す回転行列\( R_{xyz}(\alpha,\beta,\gamma) \)である。

固定座標系・機体座標系・オイラー角(右手の法則)
固定座標系・機体座標系・オイラー角(右手の法則)

また、回転軸が固定座標軸機体座標軸により、オイラー角が以下の2種類ほどある。
・固定座標系の3つの軸を中心とした回転、座標軸は静止しているので、固定角という。
・機体座標系の3つの軸を中心とした回転で、回転中に座標軸がロボットとともに回転するため、オイラー角という。

ロボットやドローンが移動の際、固定座標系を参照できないと、姿勢の転換を表すオイラー角を使うしかない場合がある。

ジンバルロック現象、他の問題点

オイラー角の問題点として、オイラー角を使用すると、オイラー角そのものの定義より、ジンバルロック現象を起こしてしまう場合がある。もともとジンバル装置(静態軸ある)で起きる現象で、航空機(剛体)も起きる。但し、固定角にはジンバルロック現象が起きない【※訂正あり】。上記オイラー角の2番目の回転角度\( \beta = ±π/2 \)であれば、1番目回転\( \alpha \)と3番目の回転\( \gamma \)が同じ回転軸になって、つまり\( X \)軸と\( Z^{\prime \prime} \)軸が重なることになる。また回転行列より、\( \alpha – \gamma = C\)にすると、\( \alpha,\gamma \)の解は無限にあることと、1自由度が失われて、3次元空間と2次元空間の違いを考えると、このような3回転はベクトルを平面あるいは錐面に限定されて、すべての3次元ベクトルへ姿勢を変換されず、2自由度にロックされたようにしか考えられぬ現象をジンバルロック現象と呼ばれる。また1ジンバルを1自由度に当てはまると、ジンバルロックといわれるのは分かりやすいだろうか。\( \beta \neq ±π/2 \)であれば、例\( \beta = \pi /3 \)、\( (\alpha , \pi /3 , \gamma) \)の組み合わせであらゆるベクトルに変換可能となる。なお他にジンバルロック現象を起こさないオイラー角\( (\alpha,\beta,\gamma) \)に対して、\( (\alpha+π,π−\beta,\gamma+π) \)の回転で同じ姿勢になる問題点もある。

よって、以下の条件付きであれば、ジンバルロックが除けて、オイラー角でロボットの姿勢を表すのが一意になる。言い換えれば、回転行列がオイラー角と一対一に対応することになる。

・ \( \beta ∈ (-π/2, π/2), \alpha,\gamma ∈ [-π, π] \)

しかし、オイラー角\( (\alpha,\beta,\gamma) \)を制限するのは無理の場合、オイラー角から四元数(Quaternion、クォータニオン)の登場となる。

また、オイラー回転の2番目の回転軸が1番目の回転軸 x 3番目の回転軸の外積の方向にある。つまり、2番目の回転軸が1番目と3番目の回転軸と直交する。当然、1番目と3番目の回転軸が必ずしも直交ではないが、ただし1番目と3番目の回転軸の外積\(=0\)つまり重なるのであれば、ジンバルロックに導く要因となる。

四元数

姿勢あるいは回転の表現には、オイラー角の3回転よりも、単純に回転軸と回転軸まわりの1回転で済む場合、四元数つまり軸回りの回転を表す四元複素数\(( w + ix + jy + kz , w, x, y, z \)は実数、\( i,j,k \)は\(XYZ\)軸に対応する虚数単位\()\)が用いられる。四元数の変数の個数がオイラー角の回転つまり\( [\alpha:Roll,\beta:Pitch,\gamma:Yaw] \)の回転順と同様に4つであり、四元数を見るだけでは姿勢転換のイメージが難しいが、回転軸と回転角の表現に変わると一目瞭然になる。よって、一般論として3次元までの空間の回転の表現に必要な変数の数=空間の次元数+1となる。回転行列からオイラー角を求めるのと、逆に回転順とオイラー角から回転行列を求めるのが面倒だが、四元数を用いて回転を表現すると気持ちがすっきりになる。

例えば、以下のように、ベクトル\( v=iv_x + jv_y + kv_z\) で表すロボットの姿勢Vを原点を通る単位ベクトル\( a=ia_x + ja_y + ka_z \)を回転軸として、右ねじが進む方向に回転角\(θ\)だけ回転させて、ベクトル\( v’=iv’_x + jv’_y + kv’_z \)で表すロボットの姿勢V’になると、以下に優雅なる表現がある。$$ v’=q v \bar{q} \\ q=cos \frac{θ}{2} + a sin \frac{θ}{2} \\ \bar{q}=cos \frac{θ}{2} – a sin \frac{θ}{2} $$
但し、原点を通る回転軸\(a\)に合わせ、右手の法則に従う回転角\(θ ∈ [-π, π]\)、\(q\)は原点を通る回転軸\(a\)と回転角\(θ\)を組合せた回転ベクトルを表す、正規化した四元数(ノルムは\(1\))、3次元空間における任意の回転に\(q\)は必ず且つ唯一に存在する。\(q,\bar{q}\)は共役または、共軛な複素数、お互いの逆回転でもある。上記計算の結果となる回転後ベクトルの\( v’ \)は回転前ベクトルの\( v\)と同じく、必ず純複素数となって、つまり実数部はゼロになる。
\( ij=-ji=k, jk=-kj=i, ki=-ik=j \)
\( i^2=j^2=k^2=-1, ijk=kk=-1 \)
\( ||a||=1, \space ||q||=||\bar{q}||=1 \)

四元数による回転表現(右手系)
四元数による回転表現(右手の法則)

また、回転 \(q_1\)に引き続き、回転 \(q_2\)を行う場合、次のように書くと良い。
$$ v’=(q_{2}q_{1})v(\bar{q_{1}}\bar{q_{2}}) $$

ロボットの姿勢変換の表現に

\(v=(1,0,0)=i\)をロボットの初期姿勢として、回転軸\(a\)回り、\(\theta\)だけを回転すると、式\(v’=q v \bar{q}\)を使って姿勢変換後の姿勢\(v’\)を求めるように、ロボットの姿勢変換に生かせるようになる。また慣性航法などにも利用されている。なお、四元数はあくまで数なので幾何的にどの表現なのか興味深いが、とにかくひとの脳に想像可能な3次元空間ベクトルに混同しないように注意する。\(q\)はROSで表現すると、\(q.x=(a.x)sin \frac{θ}{2} \\
q.y=(a.y)sin \frac{θ}{2} \\
q.z=(a.z)sin \frac{θ}{2} \\
q.w=cos\frac{θ}{2}\)となる。

簡単な計算例

例:台車ロボットはZ軸回り180°回転してポーズを求めよう。
回転前ポーズ\(v\)を機体前面の法線方向ベクトル\(v=(1,0,0)=i\)に、回転軸\(a=(0,0,1)=k\)、回転角\(\theta=\pi\)として、回転ベクトルは\(q=cos \frac{θ}{2} + a sin \frac{θ}{2} = k\)となる。回転後ポーズは、
\(v’ = q v \bar{q} = (k) (i) (-k) = (k) (k) (i) \\= -i = (-1,0,0)\)と求められる。
検証として、\(z=0\)なので複素平面\(a+bi\)の回転として考えて、\( (1) (i) (i) = (-1, 0, 0) \)と分かる。\(z=0\)を補足すると、四元数の計算結果\((-1,0,0)\)と一致することが分かる。

余談

複素平面\(a+bi\)に実数軸あるのに、なぜ四元数の実数部に対応する座標系の軸はないとか、なぜ三元数は聞いたことはないとかの質問が出るかもしれないが、従来の複素平面\(a+bi\)から拡張された三元数\(a+bi+cj\)はどうも都合は悪くて、使い物にならないので、発明者のHamilton氏(英・数学物理学者)は悩んだすえ、新たに四元数に導いたそうだ。以来、三次元空間における姿勢変換の表現に大いに活用されて、四元数そのものの幾何表現は難問。深くまで掘り下げると、矢野忠先生の「四元数の発見」をご一読ください。

【※訂正】固定角にも、第2回転軸回りの回転角度によって、ジンバルロック現象が起きる。

参考文献

・wiki: オイラー角
・wiki: 四元数
・四元数まとめ資料 – 宇宙電波実験室

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ポアソン分布~賢い在庫管理、宝くじまで

ポアソン分布

世の中にある事象が一定の頻度で、ある期間中にいつでも起きうるが、正確な発生時刻が知ることができない。例えば自動車が交差点を通過、赤ちゃんが病院で誕生、スーパーで商品が販売、機械が故障との事象があるとして、機械は月に1回故障、スーパーは1日に牛乳50本を販売、病院に1時間に3人の赤ちゃんが誕生、15分の間に40台の車が交差点を通過という具体的事象の発生頻度に対して、特定の期間例えば1日における独立事象の発生数の確率を求めるには以下ポアソン分布が使用可能となる。ポアソン分布とは、単位時間あたりに平均\(λ\)回起こる事象が期間\(t\)に\(k\)回起きる確率を表すのに使われる確率分布のこと。
$$P[X(t)=k]=\frac{(λt)^k e^{-λt}}{k!}$$
ただし、tは連続時間の長さ(期間)、λは単位時間に事象発生数(期待値)、eは自然対数の底(ネイピア数)。事象が期間t内に発生数がkの確率を計算する。ポアソン分布の期待値、分散ともλである。

応用例

在庫管理への応用例

【在庫管理の使用例】某ECサイトでは、1日に平均でPCを2台販売している。在庫切れの確率を5%以下に抑えたいので、どれだけの量の在庫が必要なのか。ただし、\(λ=2, t=1\)、単位はそれぞれ台、天とする。
1日にPCを0台販売の確率:
$$P[X(1)=0]=\frac{(2*1)^0 e^{-2*1}}{0!}=e^{-2}$$
1日にPCを1台販売の確率:
$$P[X(1)=1]=\frac{(2*1)^1 e^{-2*1}}{1!}=2e^{-2}$$
1日にPCを2台販売の確率:
$$P[X(1)=2]=\frac{(2*1)^2 e^{-2*1}}{2!}=2e^{-2}$$
1日にPCを3台販売の確率:
$$P[X(1)=3]=\frac{(2*1)^3 e^{-2*1}}{3!}=\frac{4}{3}e^{-2}$$
1日にPCを4台販売の確率:
$$P[X(1)=4]=\frac{(2*1)^4 e^{-2*1}}{4!}=\frac{2}{3}e^{-2}$$
1日にPCを5台販売の確率:
$$P[X(1)=5]=\frac{(2*1)^5 e^{-2*1}}{5!}=\frac{4}{15}e^{-2}$$
なので、1日にPCを3台以上販売の確率:
$$ P[X(1)>2]=1-\sum_{i=0}^{i=2}P[X(1)=i]\\\scriptsize=1-e^{-2}-2e^{-2}-2e^{-2}=0.3233$$
1日にPCを4台以上販売の確率:
$$P[X(1)>3]=1-\sum_{i=0}^{i=3}P[X(1)=i]\\\scriptsize=1-e^{-2}-2e^{-2}-2e^{-2}-\frac{4}{3}e^{-2}=0.1429$$
1日にPCを5台以上販売の確率:
$$P[X(1)>4]=1-\sum_{i=0}^{i=4}P[X(1)=i]\\\scriptsize=1-e^{-2}-2e^{-2}-2e^{-2}-\frac{4}{3}e^{-2}-\frac{2}{3}e^{-2}=0.0527$$
1日にPCを6台以上販売の確率:
$$P[X(1)>5]=1-\sum_{i=0}^{i=5}P[X(1)=i]\\\scriptsize=1-e^{-2}-2e^{-2}-2e^{-2}-\frac{4}{3}e^{-2}-\frac{2}{3}e^{-2}-\frac{4}{15}e^{-2}=0.0166$$
つまり1日にPCを6台以上販売の確率が1.66%なので、PCを6台以上(最低6台)の在庫が確保できれば在庫切れの確率を5%以下に抑えられる。

ナンバーズ予測への応用例

ナンバーズ数字0~9(ロト6数字1-43、ロト7数字1-37)の出た回数を1000回分もしくは2000回分で平均して、\(λ_i\)にしておく。最近の9回、ナンバーズ数字0~9(ロト6数字1-43、ロト7数字1-37)の出現回数+今度も出る(+1)の確率をポアソン分布で計算して大きさが大から小の順で並べて、確率が大きい数字が予測の結果とする。注意!:あくまで確率論からの予測(可能性)なので、ポアソン分布から宝くじが当たる意味ではない。

発明者が残した言葉

「私がランダム現象を記述する1つの確率分布を確立した」 by フランス数学者・物理学者ポアソン。

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